
東のほうから魔女がやってきて
そしてまた東のほうに去って行く。
15時頃の飛行機は無事に離陸したに違いない。
昨日まで北風だった南の島に今日は暖かい風が吹いている。
たぶん私が知っているのと同じ雑踏に今日は身を埋め、
階段を駆け上がり改札を通って地上に上がる。
そこはきっと雲一つない晴天の青空の
手袋なしでは歩けない
凛と音のするような渇いた冷たい空の東。
赤い鉄屑の塔の麓。
たった1夜の生温い南国の
どんより曇った湿気くさい
オレンジ色の街灯の幹線道路の暗がりを
思い出すともなく思い出すだろう、彼女。
それは
ほんのわすかなセンチメンタルを含んでいる。
静かに煙る霧雨のように。