
実家にかえると父がラジオの気象通報を聴いていた。
うちがそうだから、という理由で
どんな家のお父さんも気象通報を聴くものだと思っていた。
聴きながら天気図に気象マークをつけていく。
「室戸岬」「大連」「南鳥島」「ウラジオストック」
そんな地名はみんな気象通報ではじめて聴いた地名だ。
スタート地点は「石垣島」。
あの独特なテンポの読み上げ方で。次々と読み上げられて行く
地名と風向き、風速、天気、気圧、そして気温。
行ったことのない島や大陸を想像する。
「ひょう」「濃霧」「砂塵嵐」など
きいたことも、みたこともない気象状況がおかしくて笑う。
だいぶ大人になってから「誰のうちでも気象通報を聴くわけじゃない」
ことを知った時の衝撃は忘れられない。
あれから何年も経った今でも父は気象通報を聴きながら天気図を描いていた。
「今年は台風が多いからな」と普通に言う。
その変わらない光景に少しだけ安堵する。
そんな年齢に自分もなったんだなぁと思う。